日本では、アプリの中で決済が終わりません
アプリ内決済が使えるのは米国だけです。日本の販売者は必ず外の決済に出ます。そして外に出た時点で、名前と住所と電話番号を書く義務が発生します。抜け道は法律の中にあります。
Avery Bennett「インスタ 販売」の検索候補の一位は「ハンドメイド」です。二番目以降に「手数料」「禁止」「個人」「違反」が並びます。作っている人が、これをやっていいのかを確かめようとしています。
その順で答えます。ただし先に、前提を一つ壊す必要があります。
アプリの中で決済が完結するのは、米国だけです
英語の記事はここを曖昧に書きます。アプリ内での支払いに対応しているのは米国のみです。日本を含むそれ以外の国では、商品を表示することはできますが、購入の段階で外に出ます。
商品カタログと連携して投稿に商品を紐づける仕組みは、日本でも使えます。ただし、その先の決済は自分で用意した経路になります。買い物のタブ自体も二〇二三年二月に画面下から消えています。
つまり「サイトなしで売る」は、日本では半分だけ成立します。見せる部分はサイトなしでできます。受け取る部分はできません。ここを知らずに始めると、注文が来てから慌てます。
だからDMと決済リンクになります。そこで義務が発生します
実際に多いのは、DMで注文を受けて、決済リンクか口座振込で受け取る形です。候補の「支払い方法」「口座」「dm」は全部この話です。
ここで知っておくべきことがあります。DMで申し込みを受けて商品を送る形は、特定商取引法の通信販売に当たります。法律の条文でいう「郵便等」には、電子メールもSNSのメッセージも含まれると定められています。サイトを持っていないことは、関係ありません。
対象になるのは営利の意思をもって、反復継続して売っている人です。個人だからという理由での除外はありません。ここが日本語の記事でいちばん誤解されている部分です。
目安として、一か月に二百点以上、同時に百点以上、一か月の売上百万円以上、一年で一千万円以上という数字が挙げられることがあります。ただしこれはネットオークション向けに示された目安で、インスタグラム向けの数字は示されていません。類推で使われているだけです。
住所を出さずに済ませる方法は、法律の中にあります
「違法」で検索している人が本当に恐れているのは、たいていここです。自宅の住所と電話番号を、誰でも見られる場所に書かなければならないのか。
結論から。省略できます。ただし条件が二つあり、両方を満たす必要があります。
- 一つ目。請求があれば遅滞なく、書面か電子メールで提供する旨を、あらかじめ表示しておくこと。
- 二つ目。実際に、遅滞なく提供できる体制があること。書いておくだけでは足りません。
そして「遅滞なく」の意味が重要です。買うかどうかを決める前に、余裕をもって届く必要があります。だから、押したらすぐ決済が終わる形には使えません。DMで一往復してから案内する形なら、成立します。
もう一つ。屋号やアカウント名だけでは足りません。個人の場合は戸籍上の氏名が必要です。ここは省略の対象外です。
表示が必要なほかの項目は、価格と送料、支払いの時期と方法、商品を渡す時期、そして返品についての決まりです。返品の決まりを書いていない場合、買った側から一定期間の返品ができる扱いになります。書かないほうが不利になる、という珍しい項目です。
確定申告の二十万円には、続きがあります
候補にある「確定申告」への答えです。会社勤めで年末調整が済んでいる人の場合、給与以外の所得が二十万円を超えたら確定申告が必要です。
二つ、よく間違えられる点があります。
一つ目。二十万円は売上ではなく所得です。材料費や送料を引いたあとの数字です。売上が三十万円で経費が十五万円なら、所得は十五万円で、申告の義務は生じません。
二つ目。ここが本当の落とし穴です。二十万円以下でも、住民税の申告は必要です。二十万円の基準は所得税の話で、住民税にはその基準がありません。給与以外の所得については、金額にかかわらず市区町村への申告が要ります。所得税の案内だけを読んで「二十万円以下なら何もしなくていい」と理解すると、こちらが漏れます。
なお、医療費控除やふるさと納税で確定申告をする場合は、二十万円以下の所得も含めて申告する必要があります。免除されているのは申告の義務であって、所得そのものではありません。
作るものによっては、始める前に許可が要ります
ここも「違法」で検索して来る人に必要な情報です。ハンドメイドという括りの中に、許可が必要なものが混ざっています。
- 食べもの。焼き菓子などを売るには保健所の営業許可が必要です。家庭の台所では基準を満たさないことがほとんどで、専用の設備が要ります。ネットだけで売る場合も同じです。
- 体に使う石鹸や化粧品。薬機法の許可が二種類必要です。食器用や洗濯用の石鹸は対象外です。この区別は用途で決まります。
- 仕入れて売る場合。売るために買ったものを売るなら、古物商の許可が要ります。自分が使っていた不要品を売るだけなら不要です。
そして正直に書いておきます。SNSでのハンドメイド販売について、消費者庁や経済産業省が個別に出した指針は見つけられませんでした。そういう指針があると書いている記事がありますが、確認できません。上に挙げたのは、すべて一般の法令です。
それでも、始めやすさは残っています
ここまで書いたうえで、実際的な話をします。表示の義務が生じるのは、反復継続して営利で売っている場合です。年に数回、余った作品を譲る程度であれば、そもそも対象になりません。
続ける気があるなら、最初から整えたほうが安く済みます。ハイライトに商品と、送料と、返品の決まりと、連絡先の扱いを置く。これで表示の要件はほぼ埋まります。集客の話はビジネスアカウントの記事のほうにあります。



